正社員になればパート勤務に比べて格段に待遇がよくなるわけだが、一方でさまざまな面で融通が効かなく面も出てくる。ライフワークバランスが取りにくくなる点があるのだ。施設・事業所の立場からすれば正社員に登用するということはその人の生活と生計を保証する形になる。ならばパートの時以上に施設のために働いてくれとなるわけだ。
例えばパート勤務の頃には日勤のみでOKだったり、土日は休めた場合でも正社員になった途端にそれが許されなくなることがある。入所型の施設は基本的に365日24時間体制でのサービスの提供が求められる。誰かが日勤のみで勤務している裏では他のスタッフが夜勤を多く担当しているわけだ。パートの場合は正社員ではカバーしきれないシフトを「穴埋めする」立場として勤務するケースが多く、その分融通が聞きやすい。
しかし正社員として働く場合には優先的に夜勤や休日勤務を担当するのが当たり前になる。パートから正社員になった途端に生活が不規則になった、家族と過ごす時間が少なくなった、といったケースもしばしば起こる。それから待遇面の問題。冒頭で格段に待遇が良くなると書いたが、施設・事業所によっては必ずしもそうとはいえない面もある。アップした収入に対して勤務環境の負担増のほうが多い、なんてこともありうる。客観的な待遇の改善と主観的な待遇の改善との間に大きなギャップが生じるかもしれない。「給料が上がってもこんなに仕事が辛くなるんじゃ正社員になった意味がない」と後悔してしまう可能性も考えられるのだ。
そのため介護業界でパートから正社員への登用を目指す場合には環境の変化がこうした注意点をもたらさないかどうかをよく検討したうえで判断する必要も出てくるのだ。